オートクレーブには精製水を使用!不純物混入を防ぐために不可欠

オートクレーブには精製水を使用!

精製水の用途の一つとしてオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)があります。オートクレーブとは微生物などを滅菌すること、あるいはそのための機械のことです。内部を高圧力にして過飽和水蒸気を一定期間加熱することによって、滅菌作業をおこないます。

今回は、オートクレーブに水道水ではなく精製水(もしくは蒸留水)が用いられる理由を、外部データを引用しながら解説します。

オートクレーブは、医療や工業など、不純物の混入が極めて危険な場面で利用されることが多い機器です。不純物の混入などの事故が起こった場合には、取り返しのつかないことにもなりかねません。また、水道水の使用により機器の故障が生じた際にも、非常に大きな損失となってしまいます。

精製水とオートクレーブについて正確な知識を把握して、日常の業務や設備投資の際の情報に活用してください。

オートクレーブに精製水が使用される理由とは?

オートクレーブに精製水が使用される理由とは?

なぜオートクレーブに精製水を使用すべきなのかを紹介します。

※オートクレーブには医療用として用いられるもの(医療器具の洗浄などのために用いる)と化学工場用(二酸化炭素の液体化や水晶の合成などの特殊な化学反応を起こすために用いる)がありますが、大きさや形状が異なるだけで原理はほとんど変わりありません。

オートクレーブに使用すべき水

オートクレーブには、2つのシーンにて水を使用します。

①オートクレーブの洗浄の際<必ず精製水を使用!水道水はNG>
オートクレーブの洗浄の際には、水道水の使用は厳禁です。精製水もしくは蒸留水を使用してください。

②滅菌作業をする際<メーカーの推奨に従う>
過飽和水蒸気を作るための水分が必要です。この時、精製水を使用するべきか水道水を使用するべきかについては、機器によって異なります。メーカーに問い合わせるか、もしくは説明書を確認して、使用すべき水を確認しましょう。

※水道水が推奨されるケース
不純物がほとんど含まれていない精製水の方が滅菌処理には適しているように思えますが、精製水は電気を通しにくい側面もあり、精製水を使用しないとセンサーなどがうまく反応しないことがあるためです。

理由:水道水や井戸水では不純物が堆積しやすくなるため

オートクレーブは、水道水や井戸水でも全く使用できないわけではありません。

しかしながら、水道水をオートクレーブに使用した場合、水道水に含まれる塩素系(カルキなど)の消毒剤や、わずかに含まれる不純物(ミネラルや微生物類)が堆積しやすくなり、オートクレーブの故障の原因になってしまうことがあります。井戸水の場合は、さらにそのリスクが高まるため(水道水は水道法にて規定値が定められているが、井戸水はそうではないため)、絶対に使用してはいけません。

オートクレーブのメーカーであるアルプ株式会社も、HP内の「よくある質問Q&A」にて「オートクレーブに使用する水は蒸留水または精製水を推奨いたします。」とうたっています。

また、一般社団法人日本医療機器学会が公表しているガイドラインにおいても、水道水や井戸水を使用した場合には、蒸気を発生させるボイラーや、蒸気を運ぶための配管の部分で、さまざまな不純物が混入してしまう可能性があり、滅菌物への影響や患者への混入のリスクがあることを指摘しています。

参考:http://www.jsmi.gr.jp/wp-content/uploads/2015/07/Guideline2015ver3.pdf
(一般社団法人日本医療機器学会「医療現場における滅菌保証のガイドライン2015」66ページ:5-1.2 )

結論としては、メーカーが推奨している通り、オートクレーブには精製水が適していることを一般社団法人日本医療機器学会も公表しています。

オートクレーブはこまめな洗浄が必要

オートクレーブは、滅菌処理をおこなうための機器なので、こまめな洗浄が必要です。使用状況などにもよりますが、あらかじめ日程やルールなどを決めて、内部に不純物が堆積しないように徹底しましょう。

またオートクレーブ利用時に、内部に不純物が飛散してしまうことがあります。その際には、速やかに洗浄作業をおこない、内部の不純物を除去するようにしましょう。

精製水・蒸留水・超純水

オートクレーブに使用が推奨されている、精製水と蒸留水の概要や特徴について紹介します。また、オートクレーブの利用には適さないとされる超純水についても併せて紹介します。

●精製水/蒸留水/超純水
精製水・・・
水道水や地下水などの原水をイオン交換法やろ過などの処理を施すことにより、塩素などの消毒剤やミネラルを除去し、不純物のほとんど入っていない水のことを指します。オートクレーブの他に、工場での機械の洗浄、薬品や塗料の希釈液、コンタクトレンズの洗浄液、自動車のバッテリー液、手作り化粧品など、幅広い用途にて用いられ「純水」とも呼ばれます。

蒸留水・・・
水道水を蒸発させてできた水蒸気を、再び冷やして液体に戻した水のことです。蒸発によって多くの不純物が除去され、水質や用途が精製水と非常に近く、医療の現場や科学実験などの場面で用いられています。注意点としては、水と沸点の近い物質については除去が難しいこと、冷却をする際に空気中の不純物(微生物や二酸化炭素など)を取り込んでしまいやすいことです。一般的に、精製水よりも純度は劣ってしまうことが多いです。

超純水・・・
超純水とは、理論的には純度100%に近い精製水よりもさらに純度の高い水のことを指します。精製水に残存しているごく微量のミネラルなどの成分を除去することで作られます。半導体の製造や医療など、極めて純度の高い水を必要とする場面にて使用されていますが、オートクレーブの使用には適していないため、注意が必要です。

※純度の極めて高い超純水がオートクレーブでの使用に適していないのは、電気をほとんど通さない性質により、オートクレーブがうまく作動せず、空焚き防止機能が作動するなどの不具合が生じるためです。

●水の純度の目安
水の純度の目安は、電気伝導率によって計測されます(水はほとんど電気を通さないが、不純物が混ざることによって電気を通すようになるため。つまり、電気をよく通すほど不純物が多いということです)。

公益社団法人日本冷凍空調学会のホームページにて、水道水・蒸留水・精製水・超純水の電気伝導率をまとめた表が記載されているので、よろしければ水の純度の参考までにチェックしてください。

参考:https://www.jsrae.or.jp/annai/yougo/98.html

まとめ

精製水(純水)の用途の一つとして、オートクレーブが挙げられます。

オートクレーブは、不純物などを滅菌するために用いられる機械で、製品の性質上、不純物が混入しないようにシビアに注意する必要があります。そのために、オートクレーブを使用する際と、洗浄する際の水の選び方が重要になります。

ただし、水の純度が高まれば高まるほど、電気を通しにくくなってしまうという性質がある点に注意する必要があります。オートクレーブを洗浄する際には水道水=NG、精製水・蒸留水=推奨なことは間違いありませんが、オートクレーブ使用時の水についてはメーカーにて問い合わせるようにしましょう。